習慣と心のケア

子どもの算数アプリの選び方:保護者のためのチェックリスト

子どもの算数アプリを選ぶチェックリスト。学びになるかの見分け方、広告と課金、個人情報保護法とプライバシー、ストアの表示、スクリーンタイムの目安を解説します。

  • 5–10歳向け
  • 年長〜小学4年生
  • 11分で読めます

まず結論

算数アプリは、ただタップさせるのではなく考えさせるもの、お子さまのレベルに合わせて難しさが変わるもの、学校の学習に合っているもの、そして広告や課金のプレッシャー、データの共有がないものを選びましょう。プライバシーの説明、オフラインで使えるか、保護者が進み具合を見られるかも確認します。まずは1週間いっしょに試し、短い時間で使い、睡眠や外遊び、家族の時間をけずらないようにしましょう。

要点まとめ

  • 学びが第一。よいアプリは、子どもが能動的に考え、夢中になり、意味を感じ、人とやりとりできるように作られています。
  • 「教育」という表示は品質の証明ではありません。幼い子ども向けの人気アプリ135本を調べた研究では、95%に広告があり、教育アプリでも同じくらいの割合でした。
  • 広告がないこと、購入やアプリの外へのリンクがペアレンタルゲートの先にあること、プライバシーの説明がはっきりしていることを確かめましょう。
  • 日本でも子どもの個人情報には配慮が必要で、個人情報保護委員会は一般に12〜15歳以下の子どもについては保護者などの同意が必要と考えられるとしています。
  • まずはいっしょに試し、使う時間は短く。睡眠、体を動かす遊び、家族の時間を守りましょう。

学びになる算数アプリとは?

「教育」とうたうアプリの多くは、規制も検証もほとんどされていません。2015年初めの時点で、AppleのApp Storeだけで約8万本の教育アプリがあったと報告されています。学術誌Psychological Science in the Public Interestに掲載された学習科学の研究者によるレビューは、シンプルな見分け方を示しています。アプリが学びを助けるのは、子どもが能動的(ただタップするのではなく考える)、夢中(算数に集中し、気が散らない)、意味がある(生活とつながる)、人とのやりとりがある(あなたと話す話題になる)状態になり、しかもはっきりした学習の目標に向かっているときです。

4つの柱を算数アプリにあてはめると
柱よいサイン注意したいサイン
能動的考え方を選ぶ、数を動かしてつくる、説明する色をタップする、ルーレットを回して点を集めるだけ
夢中になれるごほうびが算数のあとに来て、じゃまをしない問題の合間のポップアップ、点滅する景品、動画
意味がある分ける、お金、時間など、生活の場面を使う流れも場面もない計算が延々と続く
人とのやりとり親子の話題になる、保護者もいっしょに参加できるできるだけ長くひとりで遊ばせるように作られている
例 まちがえたとき、よいアプリはどう反応する?
  • 問題:8 + 5 = ? 子どもの答え:12
  • 残念なアプリ:ブザーが鳴って「まちがい!」、すぐ次の問題へ
  • よいアプリ:8 + 2 = 10、10 + 3 = 13 と考え方を見せ、次に 9 + 4 を出す

ダウンロード前に確かめたい12のチェック項目

  1. 教えてくれる?テストするだけ? まちがえたあとに、図やヒント、考え方を見せてくれるか。
  2. 難しさは変わる? まちがえたらやさしく、できたら少し難しくなり、背のびはしても迷子にならないか。
  3. 学校の学習に合っている? 1年生なら20までのたし算・ひき算、2年生なら九九など、学年の内容に合っているか(年齢別の算数スキルも参考に)。
  4. スピードは選べる? 時間制限のモードは、もう知っている計算なら楽しめますが、それしか遊び方がないのは考えものです。
  5. まちがいにやさしい? きつい効果音、まちがえるとライフが減るしくみ、小さな子どものランキングはないか。
  6. 広告はある? いちばん安心なのは、ごほうびと引きかえに見る広告も含めて、まったくないことです。
  7. 購入をせかさない? 購入、アプリの外へのリンク、設定はペアレンタルゲートの先にあるべきです。ペアレンタルゲートとは、漢字で書かれた数を数字で入力するなど、小さな子どもには通れない大人向けの確認です。
  8. どんなデータを集める? プライバシーポリシーがわかりやすいか、第三者による追跡がないか、子どものアカウントが本当に必要か。
  9. オフラインで使える? オフラインで遊べれば、思わぬウェブリンクや動画、チャットに出会わず、車の中でも使えます。
  10. 進み具合を見られる? 保護者向けの画面で、何を練習したか、正答率、つまずいているところがわかるか。
  11. 自然に終われる? 1回が短く区切りがあるか。自動再生や、連続記録で引きとめるしくみが強すぎないか。
  12. いっしょに遊べる? 最初にいっしょに遊ぶと、アプリの教え方がわかり、親子の話題にもなります。

ヒント 10分で自分でも試す

子どもにわたす前に、5分ほど子どものつもりで遊んでみましょう。わざとまちがえてみる、すべてのボタンやバナーをタップしてどこへ行くか確かめる、設定を開く、ストアのプライバシーの欄を読む。これだけで多くのことがわかります。

広告と課金:どこに気をつける?

子ども向けアプリの広告はめずらしくなく、しかも見分けにくいことがあります。米国の研究者が幼い子ども向けの人気アプリ135本を調べたところ、95%に何らかの広告があり、無料アプリではすべてにありました。「教育」と表示されたアプリでも、ほかのアプリと同じくらいの割合で広告が見つかっています。遊びを中断する動画広告、購入をうながす表示、ゲームのアイテムに見せかけた広告などがありました。

ストアのルールも助けになりますが、内容は同じではありません。AppleのApp Reviewガイドラインは、子ども向けカテゴリのアプリには、保護者の承認が必要な部分を除き、アプリの外へのリンクや課金要素を含めてはならず、原則としてサードパーティ製の分析機能や広告も組み込めないとしています。GoogleのGoogle Play ファミリー ポリシーは、子ども向けアプリの広告を禁止してはいませんが制限しており、インタレストベース広告の禁止や、感情を巧妙に操る手法で広告やアプリ内購入をうながすことの禁止、仮想のゲーム内コインと実際のお金をはっきり区別することなどを求めています。

日本では、国民生活センターが子どものオンラインゲーム課金のトラブルに注意を呼びかけています。2020年度、契約者が小・中・高校生のオンラインゲームに関する相談は3,723件で、そのうち小学生が1,858件でした。保護者のスマートフォンやアカウントを子どもが使っていた、決済のパスワードを設定していなかった、といったケースが多く、センターは家族で課金のルールを話し合うこと、保護者のアカウントを子どもに使わせずペアレンタルコントロールを使うことをすすめています。

ヒント 購入の承認をオンにしておく

どのアプリを選ぶにしても、スマートフォンやタブレットの家族向け設定(iPhone・iPadのスクリーンタイムやファミリー共有、Androidのファミリー リンクなど)で、ダウンロードや購入に保護者の承認が必要になるようにし、決済のパスワードは子どもに教えないようにしましょう。

プライバシー:日本ではどう考えればいい?

日本では、アプリやウェブサービスの事業者が個人情報を扱うとき、個人情報保護法のルールが適用されます。本人の同意が必要な場面について、個人情報保護委員会のQ&Aは、何歳以下の子どもであれば保護者など法定代理人の同意が必要かは、扱う情報や事業の性質によって個別に判断すべきとしたうえで、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについては法定代理人等から同意を得る必要があると考えられる、と答えています。5〜10歳の子どもが使うアプリでは、保護者がデータの扱いを確かめることが前提になるということです。

ストアのルールもプライバシーにふれています。Appleのガイドラインは、子どもの個人データの扱いには厳重な注意が必要だとして、米国の児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)やEUの一般データ保護規則(GDPR)などの法律を挙げ、主に子どもを対象としたアプリにはサードパーティ製の分析機能や広告を組み込めないとしています。Google Play ファミリー ポリシーも、子どもだけを対象とするアプリが広告IDなどの識別子を送信することを禁じ、位置情報の取得なども制限しています。

  • 子どものアカウント、メールアドレス、名前が必要?必要なら、その理由は?
  • 必要のない位置情報、カメラ、マイクへのアクセスを求めていない?
  • プライバシーポリシーに、広告のために第三者へデータを提供すると書かれていない?
  • 子どものデータを簡単に消せる?

「子ども向け」「教師承認済み」の表示は信頼できる?

こうした表示は便利な目安ですが、保証ではありません。Appleの子ども向けカテゴリには、購入、リンク、データについてより厳しいルールがあります。Google Playの教師承認済みプログラムでは、ファミリー ポリシーを満たすアプリについて、専門家が品質や年齢に対する妥当性を審査・評価し、承認されたアプリにはバッジが表示されます。

バッジがないからといって、悪いアプリとはかぎりません。主に教室で使うアプリや、ほかのユーザーと交流できる機能のあるアプリなど、そもそもこのプログラムの対象にならないアプリもあります。また、どの表示も、そのアプリがお子さまのレベルや学校の学び方に合っているかまでは教えてくれません。上のチェックリストは、やはり必要です。

算数アプリのスクリーンタイムはどのくらい?

5〜10歳について、これさえ守ればよいという1つの数字はありません。世界保健機関(WHO)の2019年のガイドラインは、3〜4歳の座ったままのスクリーンタイムを1日1時間までとし、少ないほどよいとしています。5歳以上については決まった時間ではなく、体を動かすことと座りすぎを減らすことが中心になります。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」こども版は、こどもは中強度以上の身体活動を1日60分以上行うこと、そして座りっぱなしの時間、とくにスクリーンタイム(テレビ視聴やゲーム、スマートフォンの利用など)を減らすことをすすめています。算数アプリも、このスクリーンタイムの一部として考えましょう。

算数の練習なら、短い時間がよく合います。10〜15分集中したら、まだやりたい気持ちが残っているうちにやめるのがおすすめです。画面での練習は、手を動かす算数やおうちでできる算数ゲームと組み合わせましょう。たとえば次のような遊びです。

お店屋さん

対象年齢
5〜10歳
時間
10分
用意するもの
おもちゃやくだもの、紙の値札、硬貨(おもちゃのお金でも)
  1. 5つの品物に値札をつけます:30円、50円、80円、100円、120円。
  2. 子どもが2つ買って値段をたします:50 + 80 = 130 円。
  3. 200円ではらって、おつりを考えます:200 − 130 = 70 円。
  4. 小さい子は100円までの値段で。大きい子は3つ買ったり、値段を198円のようにしたりします。

アプリのお試し:はじめの1週間

  1. 1日目: いっしょに10分遊びます。まちがえたときの説明のしかたと、ボタンがどこにつながるかを見ます。
  2. 2〜4日目: 子どもがひとりで遊び、あなたはそばにいます。「今日わかったことを1つ教えて」と聞いてみましょう。
  3. 5日目: 保護者向けの画面や学習レポートを見ます。お子さまに合ったレベルで取り組めていますか?
  4. 7日目: 決めます。子どもが考えていて、伸びていて、時間になったら気持ちよくやめられるなら、続けてよいアプリです。

時間制限のある問題で涙が出るようなら、その機能をオフにして、算数への苦手意識も読んでみてください。家庭での算数全体についてはおうちで算数を教えるをご覧ください。

よくある質問

算数アプリは子どもにとって良いものですか?

子どもに考えさせ、レベルに合わせて難しさが変わり、手を動かす練習と組み合わせて短い時間で使うなら、役に立ちます。学習科学では能動的で、夢中になれて、意味があり、人とのやりとりがある学びが大切とされ、派手なごほうびをタップしていくだけでは同じ学びになりません。

5歳のスクリーンタイムはどのくらいが目安ですか?

WHOの1日1時間までという目安は3〜4歳向けで、5歳以上には決まった時間は示されていません。厚生労働省のこども版ガイドは、1日60分以上体を動かし、座りっぱなし、とくにスクリーンタイムを減らすことをすすめています。

ペアレンタルゲートとは何ですか?

購入、アプリの外へのリンク、設定の前に置かれる、大人向けの小さな確認です。漢字で書かれた数を数字で入力するなど、小さな子どもには通れないしくみになっています。Appleは子ども向けカテゴリのアプリで、購入や外部リンクの前にこうした保護者の承認を求めています。

無料の算数アプリは安全ですか?

かならずしも安全とはかぎりません。幼い子ども向けの人気アプリ135本を調べた研究では、無料アプリのすべてに広告がありました。無料でも有料でも、広告、購入のうながし、データの共有がないかを、使う前に確かめましょう。

子どもがアプリで勝手に課金してしまったら?

国民生活センターは、未成年者が保護者の同意なく課金した場合、契約を取り消せる場合があるとして、早めに消費生活センターなどへ相談するよう呼びかけています。消費者ホットライン188に電話すると、近くの相談窓口につながります。

子どもひとりでアプリを使わせてもいいですか?

最初はいっしょに使ってアプリの教え方を確かめ、そのあとは近くで見守りながらひとりで遊ばせましょう。何をしたかを話題にすると学びが深まり、問題にも早く気づけます。

出典

Edict DigitalのMatoburチームが執筆し、以下の出典と照らし合わせて確認しました:

  1. Hirsh-Pasek, K., et al. (2015). Putting education in "educational" apps: lessons from the science of learning. Psychological Science in the Public Interest, 16(1) (新しいタブで開きます)Psychological Science in the Public Interest(PubMed)
  2. Meyer, M., et al. (2019). Advertising in Young Children's Apps: A Content Analysis. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics, 40(1) (新しいタブで開きます)Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics(PubMed)
  3. App Review ガイドライン(1.3 子ども向けカテゴリ、5.1.4 子どもに関する配慮) (新しいタブで開きます)Apple Developer
  4. Google Play ファミリー ポリシー (新しいタブで開きます)Google Play Console ヘルプ
  5. 教師承認済みプログラムに参加する (新しいタブで開きます)Google Play Console ヘルプ
  6. 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(Q1-62) (新しいタブで開きます)個人情報保護委員会
  7. 「スマホを渡しただけなのに…」「家庭用ゲーム機でいつの間に…」子どものオンラインゲーム課金のトラブルを防ぐには?(2021年8月12日) (新しいタブで開きます)独立行政法人国民生活センター
  8. 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:こども版 (新しいタブで開きます)厚生労働省
  9. To grow up healthy, children need to sit less and play more(2019年4月24日) (新しいタブで開きます)World Health Organization(世界保健機関)