スキル別

子どもの暗算力の育て方:6つのコツと毎日5分の練習

暗算は速さ比べではなく、上手な考え方を選ぶ力です。10の合成・分解、10をつくる、位ごとに分ける、何十にして調整するなど6つのコツと、毎日5分の練習法を紹介します。

  • 5–10歳向け
  • 年長〜小学4年生
  • 10分で読めます

まず結論

暗算とは、1つずつ数えるかわりに、知っていることを使って頭の中で答えを出すことです。6つのコツをこの順に教えます。10の合成・分解、同じ数のたし算とその近く、10をつくる(8 + 5 = 8 + 2 + 3 = 13)、十の位と一の位に分ける、何十にして調整する(39 + 6 = 40 + 6 − 1 = 45)、とびとびに数える。毎日5分、声に出して、タイマーなしで練習しましょう。

要点まとめ

  • 暗算は速さ比べではなく、上手な考え方(方略)を選ぶ力です。土台は10の合成・分解と同じ数のたし算で、ほかのコツのほとんどがその上に成り立ちます。
  • 毎回「どうやって考えた?」と聞きましょう。考え方を声に出して説明することで、身につきます。
  • 学習指導要領では、3年生で2けたどうしのたし算・ひき算や2けた×1けたのような簡単な計算を暗算でできるよう配慮し、4年生では暗算を筆算や見積もりに生かします。
  • 日曜日の1時間より、毎日5分。声に出して、遊びのように、タイマーなしで続けましょう。

暗算とは?なぜ大切なの?

暗算とは、すでに知っていることを使って、頭の中で答えを出すことです。7 + 3 = 10 を知っている子は、7 + 4 も一瞬でわかります。10より1多いので11です。

暗算が大切なのは、すぐに出てくる計算が、問題の難しい部分に頭を使う余裕をつくってくれるからです。米国教育科学研究所の実践ガイド(2021年)は、計算がすぐに思い出せると、複雑な課題を理解したり、何段階もある手順を進めたりするための「頭のエネルギー」が残ると述べています。また、暗算のコツは、数を柔軟に使う力(数の感覚)を育てます。スタンフォード大学のyoucubedは、これをより高度な算数の土台としています。

学習指導要領解説は3年生の暗算について、日常生活でも多く使われ、かけ算やわり算の計算の途中でも必要になるからだと説明しています。子どもには、覚えている答えとコツの両方が必要です。覚えている答えは材料で、コツは残りを組み立てる道具です。具体物を使った最初のステップはたし算の教え方とひき算の教え方をご覧ください。

暗算は何歳・何年生から?

5歳ごろの小さなたし算から始まり、学年が上がるごとに新しいコツが加わっていきます。学習指導要領と解説から、暗算につながる内容をまとめました。

暗算につながる学習の目安(小学校学習指導要領・解説より)
学年(年齢の目安)学校で学ぶこと家庭での練習
年長(5〜6歳)遊びや生活の中で物を数え、多い・少ないをくらべる5や10のまとまりを指やおはじきで
小学1年生(6〜7歳)1けた+1けたとその逆のひき算を確実に。「10とあといくつ」。20 + 40、70 − 3010の合成・分解、10をつくる
小学2年生(7〜8歳)2ずつ・5ずつ・10ずつ数える。たす順番を変える・まとめる計算のくふう。見積り。九九同じ数のたし算、とびとびに数える
小学3年生(8〜9歳)2けたどうしのたし算・ひき算と、2けた×1けたくらいのかけ算は暗算で。見積り位ごとに分ける、何十にして調整
小学4年生(9〜10歳)48 ÷ 2 のような簡単なわり算の暗算。暗算を筆算や見積もりに生かす。概数6つのコツを混ぜて

2年生の計算のくふうの例として、解説は 25 + 19 + 1 = 25 + (19 + 1) = 25 + 20 や、18 + 6 + 2 = 18 + 2 + 6 = 20 + 6 を挙げています。3年生の暗算については、子どもにとって過度の負担にならないよう配慮することも書かれています。ほかの分野も含めた目安は年齢別の算数スキルをご覧ください。

6つの暗算のコツ(例題つき)

コツは1つずつ、この順番で教えます。それぞれが前のコツに寄りかかっているからです。小さな数と、本物の物から始めましょう。

1. 10の合成・分解(10はいくつといくつ)

10になる組み合わせは、1と9、2と8、3と7、4と6、5と5です。これが頭に入っていると、10をつくる、10からひく、長い式の中から10になる組を見つける、といったことができます。

例 10の組み合わせを使う
  • 7 + 3 = 10 なので、10 − 7 = 3
  • 4 + 6 = 10 なので、40 + 60 = 100
  • 6 + 7 + 4 = 6 + 4 + 7 = 10 + 7 = 17

2. 同じ数のたし算と、そのとなり

6 + 6 のような同じ数どうしのたし算は、頭に絵がうかびやすい計算です。10個入りの卵パックは、5 + 5 の2列です。となりの数のたし算は、知っている同じ数のたし算を使って、1つたすかひくだけです。半分も同時にわかります。

例 同じ数のたし算のとなり
  • 6 + 7 = 6 + 6 + 1 = 13
  • 8 + 9 = 8 + 8 + 1 = 17
  • 16 − 8 = 8(8 + 8 = 16 だから)

3. 10をつくる(さくらんぼ計算の考え方)

たし算で10を超えるときは、あとの数を分けて、前の数をまず10にし、残りをたします。ひき算では、まず10までひきます。学校のさくらんぼ計算と同じ考え方です。

例 10をつくる
  • 8 + 5 = 8 + 2 + 3 = 13
  • 9 + 7 = 9 + 1 + 6 = 16
  • 13 − 5 = 13 − 3 − 2 = 8

4. 十の位と一の位に分ける

数を十の位と一の位に分け、十の位どうし、一の位どうしをたしてから合わせます。あるいは、前の数はそのままにして、十の位、一の位の順にたします。数直線の上をジャンプするイメージです。

例 位ごとに分ける
  • 34 + 25 = 30 + 20 + 4 + 5 = 50 + 9 = 59
  • 47 + 36 = 40 + 30 + 7 + 6 = 70 + 13 = 83
  • 47 + 36 = 47 + 30 + 6 = 77 + 6 = 83
  • 58 − 23 = 58 − 20 − 3 = 38 − 3 = 35

5. 何十にして調整する

何十や何百に近い数は、きりのよい数にして計算し、あとでちがいを直します。9をたすのは、10をたして1をひくのと同じです。

例 きりのよい数にして調整
  • 39 + 26 = 40 + 26 − 1 = 65
  • 52 − 19 = 52 − 20 + 1 = 33
  • 45 + 98 = 45 + 100 − 2 = 143
  • 9 × 6 = 10 × 6 − 6 = 54

ヒント ひき算は向きに注意

19のかわりに20をひいたら、1多くひきすぎたので、1をたして戻します:52 − 19 = 32 + 1 = 33。頭の中でやる前に、10円玉と1円玉や数直線で見せておきましょう。

6. とびとびに数える

2ずつ、5ずつ、10ずつ、100ずつ、前にもうしろにも数える練習は、九九や、何十をたす暗算への橋わたしです。2年生では、数を十や百のまとまりで見ることも学びます。続きは九九の覚え方へ。

例 とびとびに数える
  • 46から10ずつ:46、56、66、76 なので、46 + 30 = 76
  • 5ずつ:5、10、15、20、25、30、35、40 なので、5 × 8 = 40
  • 93から10ずつもどる:93、83、73 なので、93 − 20 = 73

どのコツを使えばいい?

正解の方法が1つだけ、ということはめったにありません。まず数をよく見てから選びます。次の表は、決まりではなくヒントとして使ってください。

数を見てコツを選ぶ
こんな数のとき使えるコツ例
10になる組がある10の合成・分解3 + 8 + 7 = 10 + 8 = 18
同じ数、となりどうしの数同じ数のたし算とそのとなり7 + 8 = 7 + 7 + 1 = 15
たすと10を超える10をつくる7 + 5 = 7 + 3 + 2 = 12
2けたどうし十の位と一の位に分ける23 + 45 = 60 + 8 = 68
一の位が8や9何十にして調整64 + 29 = 64 + 30 − 1 = 93
何十をたす・ひく10ずつ数える57 + 40:67、77、87、97

毎回「どうやって考えた?」と聞きましょう。答えを聞けば、どのコツが身についているかがわかり、説明することで定着します。スタンフォード大学のyoucubedは、同じ問題のいろいろな解き方を出し合ってくらべる、短い「ナンバートーク」をすすめています。

毎日5分の暗算練習

朝ごはんのときや登校の道など、決まった時間を選びましょう。紙もタイマーもいりません。数はお子さまに合わせて変えてください。

  1. 1分目:とびとびに数える。 2ずつ、5ずつ、10ずつ、前へ、そしてうしろへ。大きい子は好きな数から始めます:37、47、57…
  2. 2分目:10の相方。 あなたが数を言い、子どもが10になる相方を言います(6 → 4)。大きい子は100の相方(30 → 70)。
  3. 3〜4分目:1問を2通りで。 38 + 25 のような問題を1つ出し、2つのちがう解き方を考えてもらいます。そのあと、あなたの解き方も伝えます。
  4. 5分目:役を交代。 子どもが問題を出し、あなたの答えを確かめます。ときどきわざと間違えて、見つけてもらいましょう。
例 1問を2通りで:38 + 25
  • 10をつくる:38 + 2 + 23 = 40 + 23 = 63
  • 位ごとに分ける:30 + 20 + 8 + 5 = 50 + 13 = 63
  • 何十にして調整:40 + 25 − 2 = 63

ヒント 今夜やってみよう

夕食のときに「9 + 6 は?どうやって考えた?」と聞いてみましょう。そのあと、あなたの考え方も話します。「10 + 6 = 16 で、1ひいて15」。これが最初のナンバートークで、2分で終わります。

速さと正確さ:あせらせずに流暢にするには

流暢さとは、ただ速いことではなく、正確で、むだがなく、柔軟なことです。速さは、理解とくり返しの中から自然に育ちます。日本では百ます計算のように、タイムを計る練習もよく知られています。

タイマーについては、専門家の意見が分かれています。スタンフォード大学のJo Boaler教授(youcubed)は、時間制限のあるテストが多くの子どもにとって算数への不安の始まりになると指摘し、数の感覚を通して答えを覚えることをすすめています。一方、米国教育省のWhat Works Clearinghouseの2021年の実践ガイドは、ふつう1〜5分の短い時間を計る活動を、算数につまずいている子の流暢さを育てる方法の1つとしてすすめています。ただし、方略を学んだあとに行い、目標は自分の前の記録に並ぶか超えること、大切なのは正確さだとしています。

プレッシャーは静かに逆効果になることもあります。米国の1・2年生の大規模なデータを使った研究では、算数への不安が強い子ほど高度な解き方を使わなくなり、それが成績の低さにつながっていました。

  • 正確さが先。 ゆっくりでも、よいコツで正しく答えられたら成功です。
  • 新しいことはタイマーなしで。 自信がつくまで、時計なしでコツを練習します。
  • タイマーを使うなら、短く、ひっそりと。 1分だけ、比べるのは本人の前の記録だけ。きょうだいや友だちとは比べません。
  • つらそうなら、すぐにやめる。 涙、固まる、当てずっぽうは、タイマーをしまうサインです。理由は算数への苦手意識で説明しています。
  • 指もOK。 英国のEducation Endowment Foundationは、指を子どもにとって大切な具体物としています。禁止するより、より速いコツをすすめましょう。

よくあるつまずきと対処法

  • 6つのコツを一度に教える。 対処:1週間に1つ、小さな数から。
  • 答えだけを確かめる。 対処:正解でも「どうやって?」と聞きます。1つずつ数えて出した正解なら、まだコツが足りていないサインです。
  • すぐに助け船を出す。 対処:ゆっくり10秒待ってから、答えではなくヒントを出します。「8 + 2 は?」
  • 手を動かす段階を飛ばす。 対処:コツがぴんとこなければ、物に戻ります。1円玉10枚、紙にかいた10のマス、指などです。

ひとりで暗算を練習するには?

  • 10づくりひとりトランプ。 絵札を抜いたトランプ(エースは1)を10枚表向きに並べ、合わせて10になる2枚を取ります(10はそれだけで取れます)。空いた場所は山札から補います。
  • 「わかった」と「まだ」の山。 紙切れに計算を書き、子どもが2つの山に分けます。毎日「まだ」の山から3枚を選んで練習します。
  • そろばん。 そろばんは3年生・4年生の算数で学びます。学習指導要領は、そろばんの仕組みに着目して大きな数や小数の計算の仕方を考えることも挙げています。
  • ボードゲームやトランプ。おうちでできる算数ゲームで、年齢別に画面を使わない遊びを紹介しています。
  • 算数アプリをほどほどに。 よいアプリはお子さまに合わせて難しさが変わり、広告がありません。算数アプリの選び方のチェックリストも参考にしてください。

よくある質問

暗算をいちばん早く身につけるには?

まず10の合成・分解と同じ数のたし算をしっかり身につけます。ほかのコツのほとんどがこの上に成り立つからです。週1回の長い練習より、毎日5分、声に出して練習するほうが効果的です。

指を使って計算するのはよくないですか?

いいえ。指は自然なステップで、英国のEducation Endowment Foundationも指を大切な具体物としています。禁止するのではなく、10をつくる、同じ数のたし算を使うなど、より速いコツをすすめましょう。

暗算は何年生で習いますか?

学習指導要領では3年生で、2けたどうしのたし算・ひき算や2けた×1けたのような簡単な計算を暗算でできるよう配慮します。その土台となる10の合成・分解や「10とあといくつ」は1年生で学びます。

百ます計算のようなタイムを計る練習はしたほうがいいですか?

必ずしも必要ではありません。お子さまが楽しんでいて、コツが身についている計算なら、自分の前の記録と比べる1分ほどの練習はかまいません。つらそうな様子が見えたら、すぐにタイマーをしまいましょう。

暗算が苦手で、遅れている気がします。どうすればいいですか?

最後に楽にできたコツまで戻り、物と小さな数でもう一度積み上げます。クラスで使っている考え方や言葉を担任の先生に聞いて、家庭でも同じものを使いましょう。

そろばんは暗算に役立ちますか?

そろばんは3年生・4年生の算数で学ぶ道具で、学習指導要領は、そろばんの仕組みに着目して大きな数や小数の計算の仕方を考えることを挙げています。そろばん教室に通うかどうかは、お子さまが楽しんで続けられるかを目安に考えましょう。

出典

Edict DigitalのMatoburチームが執筆し、以下の出典と照らし合わせて確認しました:

  1. 小学校学習指導要領(平成29年告示) (新しいタブで開きます)文部科学省
  2. 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編 (新しいタブで開きます)文部科学省
  3. Assisting Students Struggling with Mathematics: Intervention in the Elementary Grades(実践ガイド、2021年) (新しいタブで開きます)What Works Clearinghouse(米国教育省 教育科学研究所)
  4. Fluency Without Fear: Research Evidence on the Best Ways to Learn Math Facts(Boaler, 2015) (新しいタブで開きます)youcubed(スタンフォード大学)
  5. Ramirez, G., et al. (2016). On the relationship between math anxiety and math achievement in early elementary school: The role of problem solving strategies. Journal of Experimental Child Psychology, 141 (新しいタブで開きます)Journal of Experimental Child Psychology(PubMed)
  6. Improving Mathematics in the Early Years and Key Stage 1(指導ガイダンス、2020年) (新しいタブで開きます)Education Endowment Foundation(英国。DERA・UCL教育研究所によるアーカイブ)